第3章 <修行時代>

1年ぐらい過ぎると徐々に周りが見えはじめてくるようになったが、この世界は植木だけではなく竹や石など造園にはあらゆる要素が絡んでくるために非常に難しく奥が深いことを痛感させられた。
この頃から親方のすすめで茶道を始めたが、最初の頃は週1回のお稽古が苦痛であり、やらされているという感じが強く、あまり興味もなかった。

現場では、まずメモを取りまくり、メモ帳がどんどん増えていった。今読み返しても十分にためになるし、重要なことだと思う。やっぱり理解したと思っても、細かいことは忘れてしまうものだ。

この業界は、知力だけではなく体力も必要だ。特に夏の暑さは厳しく蜂に刺されたり、チャドクガにかぶれたり、夏の仕事は本当に過酷であり、本当に好きでな者でなければ続けることは難しいであろう。

2年が過ぎる頃になると、今度はモチやカシ、シイなどのいわゆる葉物、3葉透かしなど大体の植木をはさませてもらえるようになり、造園工事でも除々に材料を触らせてもらえるようになってきた。少しづつ造園というものが分かりはじめてきた頃だった。この頃になると後輩も入ってくるようになり、何か聞かれても答えられるように勉強するようにしてたし、プレッシャーも感じたが、何だかうれしかった。

3、4年が過ぎると、松などの手入れもやらせてもらえるようになり、植木全般を触らせてもらえるようになった。造園工事でも色々な材料に触れる機会も増え、益々造園のおもしろさが分かってきた。と、同時に奥深さを痛感するようになってきた。茶道や華道の世界にも興味が自然とわいてきて、自分の創りたい庭のイメージが固まってきたのもこの頃からであった。